Annual Best CDs 2020
2020年はコロナウイルス感染が世界的に拡大し、多くのミュージシャンが活動を制限されたことと思います。レコードとして出てきたものはコロナ禍以前のものが多いので、来年以降の影響が懸念されます。
2020年はコレクションの中心的存在のClaire Martin,Viktoria Tolstoyなどの順当な活躍の他、やはり中心的な存在でしたが10年以上CDなどが出てきていなかったJeanette Lindstromが久々にアルバムをリリースしました。(ただし2012年発売予定であったもの)
Viktoria Tolstoyの'Stations'はViktoriaらしさを存分に発揮した名盤となりました。
Dena DeRoseは今一番アメリカらしいジャズ・ヴォーカルではないかと思いますが、Sheila Jordan(Vo)やHouston Person(Ts),Jeremy Pelt(Tp)をゲストに迎えた充実したアルバムになっています。
2014年John McNeilのバックアップでデビューしたAllegra Levyは第4作'Lose My Number'(Steeple Chase)をリリースしましたが、1作毎に存在感が増し、今年はBest CDに選びました。
2014年に自身でプロデュースした'Dark'でデビューしたフランスの歌手Sarah Lancmanは2016年以降ピアニストの巨匠Giovanni Mirabassiと組み好アルバムを出してきており、2020年は'Parisienne'をリリース。フランス語中心に実にムードのよいアルバムになっています。アコーディオンを加えたり、Edith Piafの'L'hymne à l'amour'も収録されたりと、フランスらしいヴォーカル・アルバムです。(2020.12.31記載)
Viktoria Tolstoy/Stations/ACT,2020,Germany
1990年代以降のコンテンポラリー・ジャズ・ヴォーカルの代表的歌手 Viktoria Tolstoy 2020年の新作CDで、2004年以降専属となっている、トロンボーン奏者Nils Landgrenが主宰するドイツのレーベル'ACT'からのリリース。
Nat AdderleyのThe Old Country、The Great City、Poinciana、Here's To Lifeなどジャズでおなじみの曲の他、スエーデンのジャズ歌手 Ida Sandやデンマークのジャズ歌手 Sinne Eegの曲、Bob Dylanの曲など、幅広いレパートリーを、相変わらず個性的に歌っています。
1992年Stockholm生まれの正統派ピアニスト Joel Lyssarides の参加も注目されるところです。(Dec,2020)
 
Musicians
Viktoria Tolstoy;Vo/Joel Lyssarides;P/Krister Jonsson;G/Mattias Svensson;B/Rasmus Kihlberg;Ds
Songs
1 Should Run (Ida Sand)
2 Stations (Stina Nordenstam & Guy Sigsworth)
3 The Mind Is Free (Ida Sand)
4 Land Of The Humble (Nils Eriksson & Anna Alerstedt)
5 Million Miles (Bob Dylan)
6 The Streets Of Berlin (Sinne Eeg)
7 The Old Country (Nat Adderley / Curtis Lewis)
8 The Great City (Curtis Lewis)
9 Where The Road Ends (Joel Lyssarides / Nils Landgren)
10 Poinciana (Nat Simon / Buddy Bernier)
11 Here’s To Life (Phyllis Molinary / Arthur Butler)

Dena DeRose/Ode to the Road/High Note,2020,USA
ピアノ・歌の弾き語り歌手Dena DeRoseの4年ぶりとなるアルバム。
レギュラー・トリオにSheila Jordan(Vo)やHouston Person(Ts),Jeremy Pelt(Tp)がゲスト参加している。
'Ode to the Road''Don't Ask Why'はAlan Broadbentの曲やBob Doroughの有名な'Nothing Like You''Small Day Tomorrow'、自作曲'That Second Look''A Tip of the Hat'の他、'The Way We Were'や'The Days Of Wine And Roses'も歌っている。
今一番アメリカ・ジャズらしい歌を歌う歌手です。
Musicians
Dena DeRose;Vo&P/Martin Wind;B/Matt Wilson;Ds
Sheila Jordan;Vo/Houston Person;Ts/Jeremy Pelt;Tp

Songs
Ode to the Road
Nothing Like You
Don't Ask Why
All God’s Chillun Got Rhythm
That Second Look
Small Day Tomorrow
The Way We Were
Cross Me Off Your List
I Have the Feeling I've Been Here Before
A Tip of the Hat
The Days of Wine and Rose
Allegra Levy/Lose My Number/Steeple Chase,2020,Denmark
2014年 Steeple Chaseと関係が深いJohn McNeilのバックアップでSteeple ChaseからデビューCDをリリースしたAllegra Levyの第4作。デビューCD以来のJohn McNeilとのコラボレーションで、全曲McNeil作曲・Allegra Levy作詞というスタンダードからは遠い内容ですが、ポップス色のないモダンジャズ系のヴォーカルとなっており、この歌手の特色がよく出ています。
John McNeil以外のトリオは全員女性ミュージシャンというのも生きています。
John McNeilは4・5・8トラックで演奏で参加しています。(Dec,2020)
Musicians
Allegra Levy;Vo/Carmen Staaf;P/Carmen Rothwell;B/Colleen Clark;Ds/John McNeil;Tp*/Pierre Dørge;Ukulele**
Songs
1 Samba De Beach
2 Livin' Small
3 Tiffany
4 Strictly Ballroom*
5 C.J.*
6 Dover Beach
7 Ukulele Tune**
8 Zephyr*
9 Lose My Number
Sarah Lancman/Parisienne/Jazz Eleven(Star Prod)/2020,France
2012年Quincy Jonesが議長を務めるモントルー・ジャズ・フェスティバルで国際シュア・ジャズ・ボーカル・コンペティション International Shure Jazz Vocalで1位を獲得、2014年 自身でプロデュースした初リーダーアルバム 'Dark'をリリースし、2016年からはイタリアの巨匠ピアニストGiovanni Mirabassiと共演してきたSarah Lancmanの第5作。'Parisienne'という題の通りフランスらしさ満載のアルバムとなっています。アコーディオンを加えてシャンソンの雰囲気も漂い、'L'hymne á l'amour'まで歌っています。。(Dec,2020)
 
Musicians
Sarah Lancman;Vo,Comp/Giovanni Mirabassi;P/Laurent Vernerey;B/Stéphane Huchard;Ds/
Pierrick Pedron;As/Marc Berthoumieux;Accordion
Songs
1.Et ainsi va la vie
2.Tokyo Song
3.C'était pour toi
4.Parce que
5.A New Start
6.Dis-le moi
7.Ton silence
8.The Moon and I
9.L'hymne á l'amour
10.I Love You More Than I Can Sing
11.Index - l'hymne á l'amour
Claire Martin/Songs and Stories/Stunt Records,2020,Denmark
2020年Denmark Stuntレーベルからの第2弾が早くも発売されました。Claire Martinにとって初めてのビッグバンド・オーケストラとの共演で、しかも有名なスタンダード曲ばかりを歌っています。(1曲は師匠のRichard Rodney Bennetteの曲) トロンボーン・アレンジのCallum Au との並記となっています。少し古いスタンダードも入っていて、ポップス色でなくポピュラー色が強いというのもClaire Martinにとって初めてのアルバムです。落ち着いて聴ける、ゴージャスなアルバムに仕上がっています。デビュー25年からのClaire Martinのアルバムはどれも洒落た企画としっかりした内容で、今後の活躍がさらに期待されます。
Musicians
Claire Martin;Vo/Callum Au;Tb,Arrengements/Orchestra,Mark Nightingale;Orchestra Conductor
Songs
Pure Imagination
Let's Get Lost
I Get Along Without You Very Well
The Folk Who Live on the Hill
Hello Young Lovers
I Concentrate on You
I Never Went Away
The Night We Called It A Day
Stars Fell on Alabama
Don't Like Goodbyes
You and the Night and the Music

Hajdu Klára/Journey/2020,Hungary
2010年にデビューし、2015年にチェット・ベーカーに捧げたCD'Playing Standards'をリリースして一気に注目をされたハンガリーの歌手Hajdu Kláraの5作目となるアルバムです。
デビュー当初はポピュラー路線でしたが、'Playing Standards'でジャズ・スタンダードを歌い、この第5作ではポップス・トラディショナル・フォークなどと融合した現代の東欧ヴォーカルらしいアルバムに仕上がっています。表示された曲以外は彼女のオリジナル曲です。
ピアニストのCseke GáborはKozma Orsiの諸作で伴奏を務めた人です。
Hajdu Kláraの表記ですが、ハンガリーでは日本と同じく姓・名順に表記するのでこれが母国での表記です。
Karosi Júlia/Without Dimensions/Double Moon,2020,Hungary
 
2012年ハンガリーからミニアルバム'You Stepped Out of a Dream'とフルアルバム'Stroller of the City Streets'でデビューした、高い音楽性と透明感のある柔らかい声が特徴の歌手Karosi Júlia第5作でハンガリーのクラッシック作曲家、バルトークへのオマージュ作という野心的なアルバム。近年注目されるピアニストÁron TálasやアメリカのギタリストBen Monderが参加し、クラシック・ポップス・ジャズを融合させた個性的で壮大なヴォーカル作品です。
Isabelle Seleskovitch/About A Date/Black & Blue,2018,France
音楽、演劇、シェイクスピアの言語、翻訳、英語での執筆などをこなすというIsabelle Seleskovitchのセカンド・アルバム。伝統的な歌と演奏はどこか懐かしさまで感じさせられます。フランス的な華やかさや派手さはありませんが、しっかりした音楽性や歌唱力があります。ヴィブラフォンがいいアクセントになっています。
Anna Inginmaa/Anna Inginmaa/Stupido Records,2020,Finland
Finlandからの新しい歌手。少し東洋的な顔立ちですが、フィンランド語の情報しかなく詳細は不明です。
フォービートを基調にしたオリジナル曲を柔らかい声で歌っています。4曲がSeppo Kantonenというピアニストの曲で、4曲が自作またはピアニストArto Ikävalkoとの共作曲です。さわやかでジャジーで質の高いアルバムです。
Agnieszka Hekiert/Soulnation/Agnieszka Hekiert,2019,Poland
2012年ブルガリアのピアニスト Konstantin Kostovと共演したアルバム 'Stories'(Universal,2012,Poland)でソロ・デビューしたポーランドの歌手 Agnieszka Hekiert(アニエスカ・ヘキエルトと読むらしい)が再びKonstantin Kostov(P)と共演したアルバム。ポップス・トラディショナル・フォークなどとジャズが融合したコンテンポラリーな東欧ジャズヴォーカルで、ほとんどの曲を提供しているピアノのKonstantin Kostovが素晴らしい伴奏をしています。東欧ジャズ・ヴォーカルの代表作になりそうな好アルバムです。